〜1959
TAC, TOSBAC-S,D,STR, TOSBAC-2100, TOSBAC-MD, TOSBAC-3100, TOSBAC-4100
TAC, TOSBAC-S,D,STR, TOSBAC-2100, TOSBAC-MD, TOSBAC-3100, TOSBAC-4100
1950年より調査研究に着手、爾来約4年で漸く完成した日本に於ける最初の自動電子算盤機。長寿命真空管約 1,500 個, ゲルマニウム ダイオード約 2,500 個を使用し、一秒間に約300回の加法或いは約70回の乗法を行い得る性能を持っている。(東芝レビュー1954年11月号)
東芝が製作した最初の計数形電子計算機は、1954年3月、東京大学に納入したTAC(Tokyo Automatic Computer)である。そのころはまだ電子計算機はよく知られれおらず、他社の製品第一号はいずれも当社に数年おくれて、1959年以降となっている。しかし当時のマツダ研究所では電子計算機の将来性に着目してその研究を行なっていた。
TACは静電的記憶装置を有し、真空管式の演算回路によるもので、1962年その任務を終了して新形に置き替えられたが、歴史的記録品としてその一部が東芝科学館に陳列されている。
世界初の電子計算機は、アメリカのペンシルヴァニア大学によって1945年に完成した「ENIAC」である。
こちらはさる1949年夏に東大工学部の雨宮綾夫助教授やマツダ研究所の三田繁副部長らが共同研究を始め、当時は文献も少なく暗夜に手さぐりの格好だったが、ようやく4年後の1953年春マツダ研究所でモデル実験を終り、東大の協力で完成をみた。
第1号はボタンとスイッチで計算を始動する長さ約2mの制御卓と、内部に約1,500箇の真空管と2,500個のゲルマニウム二極管などを持つ高さ2.8m、幅約1mの金属製気密外枠19個で出来ている。
計算問題を解く為に加減乗除の四則演算順序を符号化してテレタイプの紙テープに鑽孔し、これを制御卓上のテレタイプ送信器に挿入すると、こんどは半紙大の1枚の紙にキチンとタイプで打った答えが出て来るという仕組。
この機械の威力はこれまでの計算器が何年もかかった面倒な計算を、例えば10ケタの加算は1秒間に1,000回も片づけるというように、アッという間に解いてしまう。
計算の途中で出た中間の答を必要な時までテレビに使うブラウン管のケイ光画面に電気的に保存したり、磁気録音機に保存する「記憶作用」や、計算途中の中間の答の数字が負号に相当した時には今迄に従って来た順序を変更して他の計算順序を遂行させる様な「判断作用」を持っているのが特徴だ。今まで発表されている計算機と比べた長所は簡単に早く割算が出来ること、並びに数が10の±19乗に相当する範囲まで拡張されたこと等である。
電子計算機の用途は暦や天測表など天文の計算や物質の分子配列の顕微鏡写真から物質の構造を計算することができるので、例えばビニールの物質構造と耐熱温度や、強度、弾力との関係が分るので思いのままに近い丈夫なビニールが出来るようになる。ダムの細部の計算はこれまで高い料金を払って外国に依頼していたが、その必要もなくなる。(1954年10月31日 朝日新聞に掲載された報道より)
ストアドプログラム による汎用の電子計算機で、演算制御部には独自のトランジスタおよびフェライトコアの組み合わせによるプラグインタイプのユニットを用い、命令数は73種類、演算速度は加減算平均200μs以下である。記録装置はフェライトコアメモリで1,000語の容量であり、現在調整中である。(1959年3月)
磁気ドラム記憶装置(右上)も、国産第一号機を完成して以来、すでに5種類のものの試作を完了した。写真はその中の一つで小形に属する。
磁気テープ記憶装置(右下)は、大容量記憶装置として不可欠で、テープ速度1,500mm/s程度のものの試作を完成。
磁心トランジスタ論理回路による電子計算機。
汎用中形電子計算機であって、制御、演算部に双磁子 3,500個、トランジスタ 7,000本、ダイオード 4,500本を使用し、記憶装置は 2,060語の磁心記憶装置であって、全所要直流電力は300Wとなっている。(1962年8月)
TOSBAC-Sは第一次試作機で、約300本の真空管により主として加減乗除の論理を確認したものである。1語は4けた、累積器のほかには3語の記憶容量しかない。データはダイヤルでいれ、結果をネオン管表示で知るものである。(1958年頃)
TOSBAC-Dは第二次試作機で、計算機としての形を整えたもの。入力にさん孔紙テープ読取機、出力にページプリンタをつけ、記憶装置は40語の磁気ドラムを追加した。
左図は、TOSBAC-SおよびTOSBAC-Dに使用された真空管ユニット。TOSBAC-Dでは約500本を使用。
右図は、磁気ドラム記憶装置。
変圧器の設計にも利用し、十分実用になることを証明した。
TOSBAC-Strは第三次試作機で、真空管をトランジスタにおきかえたもので、規模はTOSBAC-Sと同じである。
1958年にTOSBAC ( TOSHIBA BUSINESS AUTOMATIC COMPUTER ) を開発。すでに試作完成したTOSBAC-D (Drum)をモデルとしてこれをトランジスタ化した小形事務用電子計算機であり、1959年3月時点で3台受注している。
穿孔カード方式(PCS)の一環として使用できるほか、テープシステムの機械としても使用でき、事務用としても科学計算用としても使いやすい。データをカードまたはテープから読み取り、高速度で計算し、結果をカードに穿孔し、また高速度ラインプリンタにより、印刷、製表することができる。
これらの動作や計算方法はプラグボードの配線によって指令する。PCSにおける計算穿孔機と会計機とを結合した形になっていて、特にデータを読み取ったカード に結果を穿孔し同時に印刷することができるという特長が有り、事務システムの一環として非常に便利に設計されている。
ブランチ回路、セレクタを使用することによってカードまたはテープの穿孔や計算過程の条件を判断して、計算方法や読取、穿孔、印刷の方法をコントロールすることが容易にできるようになっており、複雑な仕事でも消化でき、そのプログラムも簡単であり、取扱が非常に容易である。
回路はトランジスタを使用し、ユニットシステムを採用してあるので消費電力も発熱量も少ない。また動作が安定で、計算速度が早く、小形軽量であり、保守が容易である。
前期の試作機を元にして、シリーズの一号機 TOSBAC-2101(TOSBAC-Ⅰ)は、昭和34年3月 神奈川県商工指導所に、二号機 TOSBAC-2103(TOSBAC-Ⅱ)は、同年4月 電子工業振興協会に納入された。
TOSBAC-2100シリーズは、周辺機器の構成の違いにより、いくつかのモデルが存在する。
TOSBAC-MDは、TOSBAC-3100の第一次試作機で、演算は加減算だけで、数のトランスファに重点を置いている。
第二試作機 TOSBAC-SP(Stored Program)は演算回路を強化したもので、加減乗除に判断の機能も追加し、一応計算機としての体裁を整えた。この2台の試作を足場にして、TOSBAC-3100を設計、開発した。
TOSBAC-2100シリーズに引き続き開発された機種で、汎用の中形電子計算機である。
ストアドプログラム(プログラム内蔵)方式であることを第一の特長とし、おもな記憶装置は磁気ドラム、主要構成素子はトランジスタである。
東大 元岡研究所のご協力の元に、二次にわたる試作を重ねた後第一号機に着手した。
TOSBAC-3100シリーズは、周辺機器の構成の違いにより、いくつかのモデルが存在する。
電子計算機の内部記憶装置としては磁気ドラムがあるが、ある番地を読み出したりあるいは書き込む場合、一般的に待時間が必要とされる。特に入出力装置の速度が上昇するに伴い、これらを十分処理するためにますます演算時間の短縮が要求される。
この磁心記憶装置はこのような問題に対処するためにTOSBAC-3101用として、1962年12月 運輸省港湾技術研究所に納入され実用に供せられている。
記憶容量は十進12けた+sign, 1,000語で1けたは1,2,4,8およびパリティチェックの5ビットからなるので、合計61,000ビットとなる。
コアは東芝製F6502材外径2.0±0.1mmのもので、このコア40x25で1枚のコアマトリクスが構成されている。そしてこのコアマトリクスを61枚積み重ねて全マトリクスとなっている。
各種の論文に見出しをつけて磁気テープに入れておき、希望事項に該当する文献を電子計算機の技術を利用して短時間に探し出す装置「文献検索機械」を受注。
1961年 日本科学情報センタへ納入された。
事務の機械化に欠くことのできない分類、照合を高速度で行ない、しかも仮名文字についても分類ができる電子機械を安価に供し得ることを目的として設計された。
磁気テープ照合機 TOSBAC-4134は、少ない保管で多量なデータを磁気テープ記憶装置に保管でき、そのうえ消去、書きかえが数百回以上行え、経費が著しく節約される。
*1. 東芝ビジネスエキスパート株式会社ビジネスソリューション事業部 編集・制作『東芝レビュー = Toshiba review』9(11)(58),東芝技術企画部,1954-11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3253746 (参照 2023-11-05)
*2. 東京芝浦電気株式会社総合企画部社史編纂室 編『東京芝浦電気株式会社八十五年史』,東京芝浦電気,1963. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2502114 (参照 2023-10-22)
*3. 東芝ビジネスエキスパート株式会社ビジネスソリューション事業部 編集・制作『東芝レビュー = Toshiba review』14(2)(109),東芝技術企画部,1959-02. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3253801 (参照 2023-10-22)
*4. 東芝ビジネスエキスパート株式会社ビジネスソリューション事業部 編集・制作『東芝レビュー = Toshiba review』14(3)(110),東芝技術企画部,1959-03. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3253802 (参照 2023-10-22)
*5. 東芝ビジネスエキスパート株式会社ビジネスソリューション事業部 編集・制作『東芝レビュー = Toshiba review』15(4)(123),東芝技術企画部,1960-04. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3253816 (参照 2023-10-22)
最終更新日時: 2023/11/05